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October 29, 2006

「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」展レポート

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行ってきました。「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」展。

一言で言うと、やばすぎるぐらいの感動、でした。

映像的なかっこよさを“知ってる”。
もし自分がアートの道を進んでいたら、まさに理想とする表現でした。それくらい、好き。

映像作品は長くてダメという方もいるようですが、今回の展示はインスタレーション中心。
映像自体も、見せ方も刺激的です。もし観にいこうと思ってる方は、インパクトが薄れるので以下の記事は読まないほうがいいと思います。

ということで、「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」展レポートです。

会場に入ってすぐの作品《クロッシング》から、魅せてくれます。
天井から吊り下げられた縦長4mのスクリーン、真っ暗な中を手前に歩いてくる男。
超スローモーションで、手足の挙動や服の動き、ほこりまでゆっくりと蠢き、非現実的な様相を呈してくる。やがて急に立ち止まり、しばらくすると炎に包まれ轟音とともに炎の中に消えていってしまう、という作品。これがもうすごい。
スクリーンいっぱいに映し出された全身像が火の海に飲まれていく様は圧巻。
苦行のようでもあり、人間の業のような気もする。
タルコフスキーの「ノスタルジア」の1シーンを思い出したり。
両手を少し広げているポーズは、磔刑のような印象も。
周りは真っ暗だし、超スローモーションなので時間的な感覚が希薄になって、10分以上あるような気がしたけど、実はそんなに長くもなかったかもしれない。

そして、この作品は、裏面にも同じように投影されていて、冒頭はまったく同じ。
男がものすごいゆっくりした足取りでこちらに向かい、立ち止まる。
すると、今度は一滴の水が頭頂部に落ちてくる。粒は連続し、やがて一筋の水流となる。水は迸り、滝のように落ちてきて、水しぶきの粒子が画面を這うように行き来していく中、男の姿は消え、水の落下も止む。

そう。この作品は、火と水で対になっていて、同期している。一度に両方を観ることは不可能で、片方を見ているときに、裏面は反射した光や音のもれで同期していることがわかる。

生と死、苦難と転生、瞬間と永遠、みたいなことを、ぼんやりと眺めながら考えさせられる作品です。


《ストッピング・マインド》は、スクリーンで四方を囲まれた中に紛れ込むと、草原や洞窟などの映像が静止した状態で映っている。が突然、ものすごい轟音とともにどれかの画面、または全部の画面が動き出し、また突然静止する、というもの。タイミングは不規則で、ものすごい不安感にとりつかれる。


〈パッション〉シリーズは、人物をスローモーションで撮影し、薄型のデジタルモニタで映し出す2000年以降の一連の作品郡だそうです。どれも、まるで宗教画のように(デューラーからの引用など)荘厳で、映し出されている人たちは受難に対して悲嘆し、嗚咽し、悶絶している。そんな様子が映し出され、鑑賞者はその感情の奔流にさらされる。特に印象に残ったのは、次に書く《オブザーヴァンス/見つめる》だった。

《オブザーヴァンス/見つめる》は、縦に設置されたプラズマモニタの中で、無数に並んだ人が一人ずつ、モニタの向こう側(つまり鑑賞者側)の足元を見つめ、泣き出し、苦悶の表情を浮かべ、感情を爆発させる様子がスローモーションで描かれる。鑑賞者の足元に、“何か不幸なこと”があったことをいやでも感じさせる。
人々は、その悲しみに耐え、助け合い、現実を受け止めようともがく。僕は、9.11のテロをなんとなく思い起こしてしまった。それでも、人は乗り越えて生きていかなければならない、そんなメッセージを感じた。


《ラフト/漂流》は、19人の身なりも人種も異なる人たちが立ち並ぶ(バスかなにかを待っているような)なか、突然画面の左側から強力な水流が放出され、全員がなぎ倒される様をスローモーションで撮影した作品。洪水みたいな威力を持つ水流に抗いきれず、弱いもの(高齢者や女性)から次々に倒れていく。それをかばおうとした人も倒れ、カオスが全体を覆いつくすが、やがて水流は止み、ずぶ濡れになった“受難者”たちは、放心状態で途方にくれつつも、起き上がろうとする。ハイビジョンの巨大スクリーンはものすごい迫力があり、思わず凝視してしまった。恐ろしいほどの緊迫感があった。

そして、一番最後の作品《ミレニアムの5天使》。
もっとも広い空間があてがわれたこの作品は、暗闇の中、各壁面に投影された5つの巨大なスクリーンに水中や水面が映し出され、そこに服を着た男性が落下し、浮上し、たゆたうというもの。
水泡が体の回りをまとわりつき、水しぶきが拡散している。

各映像は印象的な照明が施され、濃紺や夕日の空といった色彩をもっている。光が射し込んでいる。

逆回転の映像もあり、本来は落下しているのに、浮上しているように見える。
それが、天に召されるような、再生しているような印象をもたらしている。

タイトルが示すとおり、それは“天使”であって、生と死の境界線を自由に羽ばたいているようにも見える。

落下(浮上)は、各映像で微妙にずれていて、そのタイミングで移動しながらみることになる。
結構待つこともあり、その待っている間に水や水泡の動きを見ていると、また時間の感覚が麻痺してきて、なんとなく息苦しかったり、またはこの世界が非現実なような気がしてきたり、といろいろな感情が沸き起こってきた。
映像的にも非常に美しい作品。

その他にも、印象的な作品が多数ありました。
最後まで観ると結構グッタリしましたが、あまりに集中して観たせいかも。
会期中にまた絶対行こうと思っています。
平日の午前中とか、すいてる時間に行けば、瞑想できそうです。

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ビル・ヴィオラ:はつゆめ
2006年10月14日[土]―2007年1月8日[月・祝]
会場:森美術館 六本木ヒルズ森タワー53階

開館時間:10:00 - 22:00|火10:00 - 17:00
※1/2(火)は22時まで開館時間を延長
いずれも入館は閉館時間の30分前まで <会期中無休>

関連リンク:
MORI ART MUSEUM [ビル・ヴィオラ:はつゆめ]

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